月面工場建設計画に向けて「第一回月面開発フォーラム」を開催しました
2022年6月15日、日刊工業新聞社主催で第一回月面開発フォーラムが開催されました。そして、そこに特別協力として参画するのが日本最大級のロボットビジネス協会であるRobiZyと、月面ロボを開発するダイモンです。
イベント会場とオンラインの同時開催で360名の方にご参加いただき、イベント会場で行われた交流会は熱気に包まれておりました。本記事ではイベントの様子を一部抜粋してご紹介します。
イベント概要
月面開発フォーラムは、日本の優位性として注目されている「月面開発(地下空間の利用)」 を主なテーマとして取り上げ、事業者間の協力や連携を推進する場として立ち上げられました。様々な企業・団体の力を集め、月面工場を建設しよう、日本のロボット技術を月に送り込もうというビジョンを描き、継続的なアクションを推進していきます。2023年2月1〜3日に開催する「2023 国際宇宙産業展 ISIEX」との連携企画として、月面開発をビジネスにする新たなステージを作り上げていくものとなります。
タイトル | 月面開発フォーラム -NIKKANKOGYO MOON PRESS- |
内容 | フォーラム(6/15、9/9予定、12/8予定) 勉強会(7/14、8/10予定、10/12予定、11/8予定) 賀詞交換会(1/6予定) 国際宇宙産業展(2/1〜3) |
開催期間 | 2022年6月〜2023年2月(毎月満月の日の前後に開催) |
開催場所 | 日刊工業新聞社 東京本社 セミナールーム等 / オンライン同時開催 |
主催 | 日刊工業新聞社、モノづくり日本会議 |
特別協力 | (特非)ロボットビジネス支援機構(RobiZy)、(株)ダイモン |
Webサイト | https://biz.nikkan.co.jp/eve/isiex/moonpress/ |
主催者あいさつ:日刊工業新聞社 甲斐義憲氏
メディアやイベントを通して宇宙産業の動きを加速し、多くのプレイヤー参入を促したい。
オープニングは主催者である日刊工業新聞社 総合事業局の甲斐氏よりご挨拶。拡大の勢いを増す宇宙市場において、メディアとして誌面での情報発信だけでなく、こうしたフォーラムや勉強会、そして展示会を通して宇宙産業の動きを加速し、多くのプレイヤーの参入を促したいと伝えました。
開催趣旨:株式会社ダイモン COO、RobiZy 社会実装部会長 三宅創太
月に工場を作る。日本の企業がそれを実現する。
300兆円へと拡大する宇宙市場の2割を、日本で取りにいきませんか?
続いて本フォーラムの開催趣旨について、特別協力として参画するロボットビジネス支援機構 RobiZy 社会実装部会長 兼 宇宙部会運営担当、そして株式会社ダイモンの取締役 COO である三宅からお伝えしました。
三宅は、拡大する宇宙産業において、政府が掲げるグローバルで3%のシェアを獲得しようという目標では低すぎると言います。日本からも民間企業が次々と参入し、300兆円という将来の宇宙市場において2割、3割のシェアを狙っていかなければならない。そのためのシナリオの一つとして、日本が月に工場を建設し現地生産を実現するというものがあります。ロケットによる月輸送は高額ですから、それよりも安く月面工場で製造しそのまま現地納品できれば世界中からオファーが来るでしょう。
そういう未来を実現するため、建設やエネルギー、ロボティクスなど複数の分野を統合的に、具体的な検討を進めていく必要があります。まずは来年2月の2023 国際宇宙産業展 ISIEXで各社が具体的な構想を提示できるよう一緒に動いていきませんか?と話しました。
基調講演:月面基地と宇宙ビジネス~日本航空宇宙学会宇宙ビジョン
日本航空宇宙学会 第53期会長 河野 功氏
2050年、月の地下に100人の居住空間を作ることを目指している。
基調講演として、日本航空宇宙学会 第53期会長の河野氏より、月面基地に関する詳細や、日本の宇宙技術、ロボット技術に関するお話をいただきました。宇宙ビジネスを成功させるには、世界初のアイデアと世界一の技術が重要となりますが、日本にはそれがあるということです。
日本航空宇宙学会が掲げる宇宙ビジョンの一つとして、2050年に月の縦孔地下空洞に100人住めるような居住空間を建設することを目指しています。そこではロボットや建設などだけでなく、健康や食料、空気や水の再生循環などの技術も必要になってきます。つまりこれまでの宇宙開発には関わってこなかったような、新しいプレイヤーの役割も大きくなるということです。
月の地下基地建設は、日本人が発見した縦孔地下空洞を利用する世界初のアイデアです。日本が得意とするロボット技術は世界一の技術です。できないことはまだたくさんありますが、航空宇宙だけでなく様々な技術を持つ新しい方々に仲間になっていただいて、「できる」に変えていけば良い。本気の人は1番詳しい人に話を聞きにいくものです。できない人はできない理由を並べるが、できる人はできる方法を考えるのだと話しました。
月面基地の実現に向けて、様々な一流技術を持つ企業が立ち上がり協力し合う必要性がある。それを再認識させられるようなメッセージでした。
特別講演:アルテミス時代の月面経済開発
スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社 大貫 美鈴氏
2040年代には年間約300兆円(2700Bドル)という市場規模になり、1000人が月や宇宙に滞在、そして1万人が宇宙を往還することになる。
特別講演として、スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社の大貫氏より、アルテミス時代の月面経済開発というテーマでお話を頂戴しました。宇宙分野におけるグローバル市場動向、各国各企業の動きに精通している大貫氏から月面ビジネスに向けた最新の情報をインプットしていただきました。
この十数年間で世界中の宇宙商業化が進んできていますが、今は宇宙産業界に革新や進化、変革がいっぺんに押し寄せているような状況とのことです。参入プレイヤーも多様化し多岐に渡ります。グローバルの市場規模としては2005年頃と比較すると3倍近くに伸び、今や50兆円規模に差し掛かろうとしているところです。これが2040年代には100兆円、2050年近くになると300兆円(2700Bドル)くらいになっていく。そしてその頃には、1000人が月や宇宙に滞在し、1万人が宇宙を往還するような時代になるだろうというお話でした。
日本もこのような市場拡大の初期フェーズから、世界をリードして月面経済開発に貢献していくことが期待されています。
講演:鹿島建設の宇宙への取り組み
鹿島建設株式会社 大野琢也氏
鹿島建設の遠隔操作技術を月面で利用する研究、さらには人工重力施設の研究をしている。
鹿島建設の大野氏からは、同社で研究されている遠隔操作技術や人工重力施設の取り組みについてご紹介いただきました。同社では遠隔操作技術の研究をされていますが、それを月でも利用することを研究しているとのことです。
宇宙空間や月、火星において、実際にどのような建築ができるか、具体的なビジュアルイメージと共に見せていただき大変ワクワクするような内容でした。それぞれ天体によって前提となる重力環境が異なるため、重力施設の形も変わるのです。
講演:月面探査車「YAOKI」の取り組み
株式会社ダイモン CSO 山口慶剛
人が行く前に、月の地下空洞にYAOKIを送り込み探査する。小型軽量ロボットが、群制御で高度な役割を果たす。
ダイモンの山口からは、月面探査者「YAOKI」の取り組みについて紹介しました。
まずは今年、最初のYAOKIを月に送り込み、来年は無線充電機能を追加して稼働時間を伸ばす。2025年には100機レベルで群探査できるようにし、人が行かなくても月の地下空洞の状況が事前にわかるようにする。既にいくつかの企業とパートナーシップを組んでいるが、今後も様々な企業と協力して月面開発に貢献していきたいと語りました。
主催者あいさつ:日刊工業新聞社 小林稔昇氏
日本の「ものづくり産業」が本格的に月面開発に取り組む時代になることを伝えていきたい。
クロージングとして、主催者の日刊工業新聞社 小林氏より、来年2月に開催される2023 国際宇宙産業展 ISIEXと、それと連携する形でこれから毎月開催していく本フォーラムについてご紹介がありました。ISIEXは前回よりもさらに規模を拡大し、日本最大級の宇宙産業展示会として、日本のものづくり産業が本格的に月面開発に取り組む時代になることを伝えていきたいと話しました。
交流会
会場ではそのまま交流会が行われ、講演者や参加者同士で名刺交換と、今後の取り組みについての意見交換や相談が行われていました。オンライン参加という選択肢もある中で、わざわざ遠方から足を運んだ参加者も多く、非常に熱の入った会話がそれぞれで繰り広げられており、より本気度の高い方々が会場に集まっていたような印象でした。ここから月面開発に取り組むコミュニティが形成されていくのが楽しみです。
まとめ
第一回月面開発フォーラムの様子をレポートとしてまとめました。これから毎月、満月になるタイミングでこのようなイベントが開かれていきます。来月は月面開発における「建設」「エネルギー」分野の勉強会です。実際に取り組みを開始している企業からリアルな状況を聞き、貴社の新規事業にも「月面開発」も検討し始めてみてはいかがでしょうか?
月面開発フォーラム -NIKKANKOGYO MOON PRESS-
https://biz.nikkan.co.jp/eve/isiex/moonpress/
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